ジャンルの衰退 ~深化したSFと、画一化しつつあるライトノベル~

『祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理を顕す。驕れる者久しからず。ただ春の夜の夢のごとし。猛き人も遂には滅びぬ。偏に風の前の塵に同じ。』

平家物語の冒頭にもあるとおり(ちなみにこの冒頭、私が一番好きな日本語の一つです。まじかっこいいと思う)、どんなに栄えたモノでも必ず滅びます。それは小説のジャンルだって同じ事。
で、その衰退に二つのパターンがあるって話。

一つは深化して行く方向で、もう一つは画一化していく方向。
前者の代表例がSFで、後者の代表はジャンプ漫画だとしましょう(SFが衰退したのに異論を挟む人は居ないと思いますが、ジャンプ漫画が衰退しているかどうかは議論が分かれるところでしょう。ですがまぁそこはとりあえず認めて読んでください)。
そして、ライトノベルもジャンプ漫画と同じ方向性に進んでいる、と思っています。


まずSFはなぜ衰退したのでしょうか?
SFは読者に対して求めるものが多すぎました。やれ、ディックを読んでない奴はもぐり、だとか、ハインラインを読んでないとこのSFは理解できない、とか、このネタはもうクラークが書いてるだとか。
つまり、大げさなことを言うと、過去の全作品を読んで初めて新しく出るSFを楽しめる。最低でも何10冊か読んでからSFを語れってな感じです。
こんなことやっていれば、当然付いてこれる読者は少なくなっていきます。同時に書くほうも過去のSFを勉強しなければならないと言う脅迫観念があり、どんどんと萎縮していきました。
大体星新一が馬鹿みたいにアイディアを浪費したせいで、新しいSFなんて物はよっぽどの天才以外書けなくなった。
これがジャンルの深化による衰退です。


では、ジャンプ漫画の方。
ジャンプ漫画と言えばドラゴンボールです。ドラゴンボールと言えば天下一武闘会=トーナメントシステム。これがあまりに売れたせいで、それ以降のジャンプ漫画はほとんど全てがトーナメントをやるようになりました。たるるーとくんも闘ってたし、幽遊白書、ブリーチ、ナルト、ワンピース、みんな闘ってます。
要するに、キャラクターや世界設定が違うだけでやってることは全て同じ。
新しい漫画を描き始めても、みんな途中から同じになってしまう。
これがジャンルの画一化です。

こんなことをやっていれば飽きられて当然、なのですが、深化の方と違って、画一化は結構長生きします。
なぜなのか?
変身3部作と言うアニメが昔ありました(超変身コス∞プレイヤーと言う本編と、それを作ったプロデューサーの物語、そしてキャストと作者の物語の3部で構成されていて、結構面白いです。大島さんのキャラデザ好きだし、いくーたーみつきーも必聴)、その中にこんな台詞があります。以下引用()内は補足。

『子供には子供なりのツボがある。無闇に大人にも見られるものにしようと考えるのは、作り手の傲慢と言うものではないのかね? ターゲットの大部分は、初めてヒーローモノを見て通り過ぎていく子供たちであって、君たち(特撮マニア)ではない』

以上引用終わり。
つまり、ナルトやブリーチがドラゴンボールをなぞった漫画だったとしても、それがわかるのは昔ドラゴンボールを読んできた現在の大人であって、初めてナルトやブリーチを読む子供たちにとっては新鮮なままだ、って事。

なるほどなーと思ったんですよね。
SFの場合、既存のファン=マニアだけを相手にジャンルを展開して行ったのだけれど、ジャンプ漫画など、子供向けの場合は、初めて読む読者に向けてジャンルを展開しているって事。そして、同じ展開に飽きられたとしても。飽きてない新鮮な読者が次々投入されるから、衰退しない、って事です。

まぁ、確かに売り上げ的には現在もジャンプ漫画は売れてます。だから衰退していないと言うことも出来るでしょう。でも、それは本当でしょうか? いくら売り上げは続いていても、現在の状況は事実上の衰退、停滞だと思います。
新作を作る必要はなく、ドラゴンボールを再掲載し続けても、おそらく同じぐらいの売り上げがあるはずです。
それは事実上ジャンルの死でしょう。

で、ライトノベルも同じ状況に陥っている。
変わるのはキャラと設定だけで、やってることは全く同じ。かわいいヒロインがいて、主人公がちやほやされて、ちょっとした事件が起きて、解決する。
だからその定型に乗っていた「俺の(ry」は編集に評価され、売れた。
まぁ結構ライトノベルは裾野が広くて、定型から外れてる作品も沢山あります。でも、売れてるのはみんな画一化されてきている。


SF的衰退。そしてジャンプ的衰退。どちらも根っこにあるのは読者の求めるものに応じたと言う点ではないかと思います。
読者は消費するだけです。その読者の好みに合わせると、待つのは衰退でしかない。
新しいものを生み出すのは常に作者であって、読者の好みをいくら調べても新しいものは生まれない。
特にジャンプ的な衰退は、マーケティングのやり過ぎによるものだと思います。

確かに売るためにはマーケティングした方がいいでしょう。でも、マーケティングは所詮危機回避の方法です。大外れはしないけれども。大当たりもしない。
過去に大ヒットとしたものというのは、全て作者の冒険から生まれていると思います。
作者の冒険を否定し、読者の求めるものを安定供給しようとする姿勢は、必ず衰退につながっていると、私は考えるわけです。

ですから、売る側の立場、出版社編集の方々は特に肝に銘じて欲しいのです。
既存の面白さを持つものよりも、新しさを持つものの方をよく宣伝して、売ろうと努力する事を。
目先の利益を追うのではなくて、ジャンル全体の未来を考えて欲しいと。
このままでは、パクリ、とまでは言わなくても、アレンジがうまい作家ばかりが生き残り、新作の書ける貴重な人材が売れずに消えて行ってしまう気がします。
要するに売れるものを作家に書かせるのではなく、作家の書いた物を全力で売る。この姿勢ですね。

まぁ、こういった事に対する危機感を覚えている人は居るみたいで、MW文庫の新設等はその現われじゃないでしょうか。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 7

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック